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EMATEC通信 【Vol.3】 R6.9

「各種測定・調査業務」について


当センターでは、設立当初より、「環境大気」や「河川・湖沼等における水質」の現況・事後調査を初め、各種工場における「排ガス・排水調査」等の業務を行ってまいりました。また、近年では「土壌汚染状況調査」、「PCB含有塗膜調査」や「石綿事前調査」についても、お客様からのお問い合わせや調査依頼が増加しています。

今回は、当センターが行っている各種調査の中で、法改正により2023年10月以降、建築物の解体・改修工事の際には、専門の有資格者による調査報告が必要となった「石綿事前調査」について紹介したいと思います。
石綿とは、「いしわた」「せきめん」「アスベスト」等と呼ばれており、繊維状鉱物の総称です。
(以下、本稿では「アスベスト」と表記します。)労働安全衛生法の規制対象となるアスベストは、繊維状を呈しているアクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及びトレモライトの6種類と定義されています。

偏向顕微鏡写真の一例(クリソタイル)

その汎用性・経済性から、アスベストは古くから電化製品等の工業製品から、建材としても利用され、吹付け材や成形材、耐火被覆材、断熱材、吸音材等、その用途は多岐に亘ります。

アスベストが問題視される様になったのは、20世紀に入ってからのことです。アスベストの有害性については1960年代には明らかになっており、1970年代以降は少しずつ規制が進んでいましたが、事態の深刻さが広く認識されるまでには長い時間がかかっています。

結果的には、アスベスト含有建材は、2006年(平成18年)9月以降、製造・使用ともに禁止されましたが、それまでに使用されたアスベストの8割は建材に集中しているとされているため、古い建築物の外壁・壁紙・煙突・天井・スレート屋根等に、現在も大量に残存しているものと考えられています。

高度成長期に建てられた建物は、2020年代以降、一斉に耐用年数を迎えます。今後、それらの建物を解体する工事の増加が予想されますが、工事に伴うアスベスト飛散および暴露による人体への被害を未然に防ぐ対策がより重要なものとなることは必然的です。

・2020年:最高裁判所は建設型アスベスト被害について国の責任を認めたことをきっかけに、業界の潮目は大きく変わり、被害拡大の解消を図るべく2021年、2022年、2023年と3回に分け、改正大気汚染防止法が施行されています

・2021年:規制対象建材を拡大、石綿含有建築物の解体・改修工事に際して事前調査方法の法定化・作業記録の作成・保存を義務づけ

・2022年:石綿事前調査結果報告システムによる調査報告が義務化

・2023年:建築物石綿含有建材調査者による調査報告が義務化

なお、建築物の解体・改修前のアスベスト事前調査は、原則、全ての建築物において「建築物石綿含有建材調査者」等の法令で指定された有資格者による調査実施が義務づけられています。(個人宅の改修や解体工事も含む)。

ただし、報告・調査が不要となる以下のような例外もあります。

〇報告が不要な工事(調査は必要)

  ・床面積が80m2未満の解体工事

  ・請負金額税込み100万円未満の改修工事

  ・請負金額税込み100万円未満の工作物の解体工事・改修工事

〇調査が不要な工事

・アスベスト除去を行う材料が木材、金属、石、ガラス等のみで構成されているものや、畳、電球等のアスベストが含まれていないことが明らかなものであって、容易に取り外すことが出来、周囲の材料を損傷させない作業

・釘による固定や、釘を抜くなど、当該物質が飛散する可能性が殆どない作業

 

最後になりますが、最近のアスベスト関連法令の動きとしては、これまで調査対象物であった「戸建て」と「一般建築物」のほかに「工作物」が新たに区分され、当該調査に必須な有資格者として「工作物石綿事前調査者」が設置されました。令和8年1月以降、より専門的な技術や知識をもった者における調査・報告が義務付けられます。

以上、アスベスト(石綿)事前調査についてのあらましをご紹介させていただきましたが、如何でしたでしょうか。当センターでは、今回ご紹介した「アスベスト(石綿)事前調査」のほか、各種測定・調査に関するご相談を承っております。このHP内の「環境相談窓口」のページにて受付させていただいておりますので、是非ご活用下さい。

EMATEC通信【Vol.3】は、下記よりダウンロードできます。

環境法令情報

 官公庁より公表された主な環境法令等の情報を掲載しています。
各事項の詳細については、官報や所管省庁のホームページ等でご確認ください。

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令(昭和49年政令第202号)の一部を改正する政令

令和6年7月10日 政令第244号

PFOI等の製造設備に関する技術上の基準を定める省令

令和6年7月10日 厚生労働省・経済産業省・環境省令第1号

PFOI等の取扱いに関する技術上の基準(許可製造業者に係るものに限る。)を定める省令

令和6年7月10日 厚生労働省・経済産業省・環境省令第2号

PFOI等の取扱いに関する技術上の基準(許可製造業者に係るものを除く。)を定める省令

令和6年7月10日 厚生労働省・経済産業省・環境省令第3号

PFOI等の容器、包装又は送り状に当該PFOI等による環境の汚染を防止するための措置等に関し表示すべき事項

令和6年7月10日 厚生労働省・経済産業省・環境省告示第5号

■概要

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の改正により、新たに「ペルフルオロアルカン酸(構造が分枝であって、炭素数が8のものに限る。)又はその塩」(PFOAの分枝異性体又はその塩)及び「ペルフルオロオクタン酸関連物質」(PFOA関連物質※1)が第一種特定化学物質に指定されました。これに伴い、これまで第一種特定化学物質に指定されていた「PFOA又はその塩」は「PFOA若しくはその異性体又はこれらの塩」に改められました。また、第一種特定化学物質等取扱事業者に対する技術基準や表示を規定する省令・告示についても新たに制定されました。

※1:現時点で「PFOA関連物質」は、おもに、「ペルフルオロオクチル=ヨージド」(PFOI)と「8:2フルオロテロマーアルコール」(8:2FTOH)を指し、「PFOI等」とも言われています。

■施 行 

「PFOAの分枝異性体又はその塩」の第一種特定化学物質への追加指定については令和6年9月10日、その他の事項については令和7年1月10日が施行期日となっています。

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